WBCで、日本が準決勝でアメリカ、決勝で韓国を降し、2連覇を果たした。
前回の優勝チームということで、多大な期待を受けた中、結果を出し続けた彼らに惜しみない賞賛を送りたい。
特に準決勝でアメリカに勝ったという事実は、日本の野球文化の成熟、レベルの高さを証明するに足る結果であったと思う。
この一戦だけで、日本の野球の方がアメリカのbaseballよりレベルが高くなったと判断するつもりは毛頭ない。しかしながら、「比べられる位置にまで来た」と断言してもかまわないのではないかと思う。
WBC出場辞退者が相次いだものの、それでもこの日のアメリカの陣容は豪華なものであった。
内野は一塁手のケビン・ユーキリスが抜けたものの、セカンド・ロバーツ、サード・ライト、ショート・ジーターはそのままオールスターだし、外野もブラウン、グランダーソン、ダンの3人は十分一流のメジャーリーガーと呼べる面子だし、キャッチャーのマッキャンも素晴らしい選手である。
それよりなにより、先発投手のロイ・オズワルト投手は全米でも5本の指に入る程の好投手で、大舞台にも強く、わざわざローテーションを変更してまで日本にぶつけてきたということからも、アメリカが相当、日本を手強い相手とふんでいたという事が分かる。
場所がドジャースタジアムで完全にアウェー、それに主な審判がMLBからの派遣で、何度か明らかな「ホームアドバンテージ」と思われるジャッジがあった。それでも、日本の強力投手陣はアメリカを抑え、オズワルトをKOし、リリーフからも見事追加点を取った。
8回表にアメリカの追撃を受けたときは確かに危ない展開だったのだが、それでも4回裏以降は日本の試合は危なげがなかったし、実に安定感があった。
アメリカはWBCにそこまで本腰でもないし、選手もコンディションを必ずしもピークに持って来ているわけでもないということは事実であろう。真夏にWBCが開かれたとして、アメリカの選手たちが、この程度のコンディションで試合に臨むとは思えない。
それでも、20年前、いや15年前の日本が同じ状況でアメリカと試合をする機会を持ったとして、勝つ可能性があったかと問われれば、私は「とてもじゃないが、無理だったのでは」と思わざるを得ない。
それほど日本野球とアメリカのbaseballの壁は厚かったのである。
日本の野球に関わる人たちは、自分たちの向上にもっと胸を張っていいと思う。アメリカが弱くなったわけじゃなく、日本が強かったのである。実際、New York TimesもMajor LeagueのオフィシャルサイトでもWBCの優勝候補筆頭に日本の名前を挙げていたのである。彼らのスポーツを見る時の眼は極めて冷静なのだ。
決勝は激戦で、今も興奮覚めやらないが、とにかく、韓国も鍛えられたいいチームであったということが言えるように思える。まぁ、個人的にはイチローにまさかあんな場面が与えられて、そこでしっかり結果を出す機会があるだなんて夢にも思わなかったが。(ずっと信じていましたけど。本当に)
ところで、私はずっと公言し続けているのだけれど、原辰徳という人は選手時代も監督時代も本当に過小評価されるきらいがあって、気の毒である。
しかしながら、今回の優勝で株を上げたのではないかと、ちょっと嬉しく思う。
原さんが選手だった時代、私は(関西人の常?)アンチ巨人だったわけであるが、それでもこの人はなんとなく好きだった。非常に好感が持てる紳士だと思うし。
WBCで原監督が優勝監督となり、去年西武を日本一に導いた渡辺監督といい、彼らは新時代のリーダーとしてふさわしい資質を持っているのではないかと個人的には思う。
例えば、原監督は、これだけの短期間で選手たちを束ねることに成功し、実に素晴らしいチームを形成された。
日頃は各自の球団で主力を張っているお山の大将たちから、不協和音は全く聞こえてこなかった。
控えに甘んじるということは、端から見るより屈辱的なことだと思うのだが、それでも適材適所に人材を見極め、一人一人に眼を配り、最大限のパフォーマンスを引き出す場を提供するという点において、原監督は実に素晴らしい才能を持った人だと思う。
コーチの人選も素晴らしかったし、年配の実力者たちともうまく人間関係を築く能力がある。思うに、彼は人をリスペクトし、人の特性をうまく見抜き、うまく乗せることができるのだと思う。
それでいて、批判の矢面には自分が立ち、責任を背負うだけの自立心を持っている。彼とともに仕事をすると、きっと非常に快適な気分で、自分の能力が発揮できる機会が与えられるのではないかと思う。
自軍の選手、コーチ、スタッフに対する配慮、リスペクトもそうであるが、彼は対戦相手に対する配慮も素晴らしく、実に紳士的である。アメリカ、韓国、キューバ、中国、それぞれに対して、非常に尊重する態度を取っているから、相手の選手たちからもいい反応が返って来る。
それに審判団に対する紳士的な態度は決して反感を呼ぶことはなかったし、マスメディアに対する応答も実に見事である。
WBC監督人事が決まった当初は、「原じゃダメだ」、「なんで原なんだ?」、「読売か」、「頼りない」と散々にこき下ろされたが、うまく受け流し、実に紳士的に応対していた。
よく考えれば、原辰徳という人から、不満や悪口の類いを聞いたことがない。あれだけ根も葉もないことを言われ続けていれば、愚痴の一つもこぼしたくなるであろうが、彼はそういった態度を微塵も見せることがない。実に素晴らしい。
采配面では何かと酷評されることも多いが、やはり長年の監督経験で成長しているということが見て取れるし、それにこの大会では、盗塁やエンドランのタイミングが実に巧妙であったと思う。
特に采配面は結果論で、あれこれと批判がつきやすいのだが、それでも私は原監督の戦術は素晴らしいものであると思う。まず、選手に対する思いやりと、控えの選手たちに出番前の準備ができるような一貫性があるという部分において、人を扱う能力に長けているなぁとつくづく関心するのである。
それに選手たちの失敗を責める事が決してない。「使っているのは俺なんだから、俺の責任で好きにやってこい!」という懐の深さが見てとれる。
選手が失敗すると、ベンチを蹴り上げ、怒鳴りつけ、ベンチ裏で殴る蹴るの暴行を加え、不満な判定があれば審判にすら手を上げるような人がいる一方で(正直に言うと、この人は弱小阪神を引っ張り上げてくれたので、ちょっとだけ好きです)、彼のようなリーダーは、人に対するリスペクトを失わない、人間味溢れた素晴らしい人だと私は思います。
たぶん、こういった人の方が長期的に見ればうまく組織を操っていくのだろうし、それに自分と自分に関わった人たちがみんな幸せになれるんだろうなと思う。彼ら若い指揮官たちは、今後の時代を切り開くだけの能力と配慮があるのであろう。(こういう部分は前の王監督も持ち合わせていたと思う)
野球が発展して、それで野球でちょっと幸せな気分になれる人が一人でもいればいいなと私は思います。
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